SSブログ
プロローグ ブログトップ

コトの始まり。 ~入院までに①~ [プロローグ]

私はBERA・54歳、おばさん。

2012年に無職となり、職を探すも、
資格欄に『Word/Excel必須』といわれると応募資格がない。
何とかしようと職業訓練校でパソコンの基礎を習うことにした。
そして苦節4ヶ月。
Word/Excelとも検定試験をつい昨日、受け終えて、
訓練はあと5日で修了するところまで来ていた。

----------------------------------------------------------------------------

暦の上では立春を過ぎても
北海道の冬は今が一番の「寒さの底」だ。

車道はスタッドレスタイヤに磨かれてスケートリンクのようにツルツル、
歩道は除雪が進まないため車道より高くなり、踏み固められてボコボコのツルツル。

青信号がチカチカしたので慌てて小走りになる。
横断歩道を渡り切った、と思った最後の一歩。
左足首を捻り、やや低くなった車道にしりもちをつくようにコケた。

バキッ!

左足首から大きな音がした。
車道にしりもちをついたお尻を半分はみだしたまま、
私はもう立ち上がれなかった。

パニックの洪水。 ~入院までに②~ [プロローグ]

立ち上がれないと分かった瞬間、
どわ~っと色々な段取りが押し寄せてパニックになった。


学校に遅刻の連絡を入れなきゃ!
いや、あと100mくらいだから這って行けるかも?
いや、他の訓練生が通りかかって伝えてくれるかも?
  ↑ この時点でなぜか電話をかける、ではなく ひたすら「行かなきゃ」としか思いつかない。


訓練は絶対に休めない、とハローワークに言われている。どうする?
あと5日で修了なのに、退学になっちゃうの? でも動けない。
ハローワークに連絡しなきゃ、ああ、でも学校に行かなきゃ。
  ↑ まだ学校に行くことに固執して具体的な解決策を考えようとしていない。


バキッって? バキッって? 今足首の骨が折れた音だよね?
歩けないの、私?
無職なのに、これって絶対医療費いっぱいかかるよね?
もし入院なんてことになったら借金しなきゃ?
  ↑ 今車道にはみだしている自分の状況を忘れて、ただただ先の不安。



「起きること、できます?」

話しかけられて我に返り、振り返った。
40代前半くらいの、優しそうな女性が立っていた。


近くて遠い、整形外科。 ~入院までに③~ [プロローグ]

出勤途中と思われる彼女は、自分のことはさておいて、心配してくれた。

まず、支えてもらって、立たせてもらう。
が、足首から下の部分に、上の部分を乗せたいのに、
「くにゃん」として乗ってくれない。

体感的には・・・
足首から下が、プリン。プリンにはポッキーを立てる穴が開いている。
足首から上は、芯にポッキーが入っている筒型のプリン。

見た目には、足首の上と下はつながっているのだが、
上からポッキーが出ていないのか、
下に穴が開いていないのか、
プリン同士が くにゃん、くにゃんと擦り合うだけで、
重ねて立つ感じが全くないのだ。しかも、擦り合う時、とてつもなく痛い。


立つのは諦め、そのまま歩道に座らせてもらった。
初めて電話をかけることを思いついて訓練校に遅刻の連絡をし、
親切な彼女が拾って、乗せてくれたTAXIで、近くの整形外科へ向かった。


私がコケた所を左に100m行くと訓練校だが、
反対に右に100m行くと整形外科があった。
親切な彼女と運転手さんが、受付に事情を告げ、車いすで病院内まで連れて行ってくれた。

こんなに近くに整形外科があったんだ。
そして、こんな近くに行くのにTAXI代かけちゃったんだ。
でも、やっぱり一人じゃ絶対に来ることはできなかった。
助けてくれて、本当にありがとう。

診察までの道のり。 ~入院までに④~ [プロローグ]

受付女史が私を引き取ったことを見届けて、親切な彼女は去って行った。
「せめてお名前を・・・」と懇願する私に、首を振り、笑顔のままで。

TAXIの運転手さんも去って行った。
「帰るときも介助するから連絡して」と名刺を残して。

親切な人というのは どこまでも親切なのだった。


受付女史は受付票の記入を促すが、なかなか書けない私。
痛みで息が詰まり、文字を書くことに集中できず、手にも力が入らない。
こんな経験は初めてだった。
結局、受付女史にすべて代筆していただいた。(求職のため持ち歩いていた履歴書が役立った)

次に、救急入口横の控室のようなところで院内パジャマに着替えさせられた。
ショートブーツやソックスを脱ぐときに難儀したが、それもそのはず、
現れ出た左足首は、
「ドーナツを履かせて、足との境をきれいに均した」ように腫れあがっていた。


「レントゲンを撮ります」と、ロビーで待たされる。
玄関ドアが開くたびに吹き込む寒風に、院内パジャマの身は鳥肌が立つ。
その間にレントゲン室には何人か呼ばれていく。
そうか。
救急車で搬送されたわけじゃないから、外来の順番通りなのね・・・。

ようやく呼ばれてレントゲン室に入ったが、
持ち上げられても、角度を変えられても、
何をしても痛さで息が詰まって、つらい撮影だった。


診察室に呼ばれるまで時間があった。
痛いことにも少し慣れて、普通に呼吸できるようになってきたので、
訓練校とハローワークに状況を連絡し、詳細は落ち着いてから後日、となった。


名前を呼ばれた。
コケてから1時間半くらい経っただろうか。やっと診察室に入れる。

左足関節脱臼骨折。 ~入院までに⑤~ [プロローグ]

レントゲン写真を見ながら説明を受ける。
「左脛骨・腓骨遠位端骨折(左足関節脱臼骨折)」で、
要は滑った時に足首をひねって脱臼し、捻りと違う方向に倒れたのでバキッといったのだそうだ。
素人目にも足首の上下をつなぐ骨が両方折れているのがわかる。

「このまま家へ帰っても何もできませんので入院しましょう。」

え・・・家に帰れないの・・・?


手術はすぐじゃない。 ~入院までに⑥~ [プロローグ]

このまま家に帰らず入院・・・
「検定終わるまでは自宅で勉強するから、溜めさせてね」と山盛りになっていた洗濯物。
朝洗わずにそのままにした茶碗。帰ったら一気に色々する予定だったのに・・・

「はい、痛いですけど頑張ってね!」

気が付くと先生、看護師さんたち3人がかりで左足を抱え上げている。
「添え木、作りますからね!」
皆で大きな湿布薬のようなシートで左足を下から支え、
ぶらん、となっていた足首を直角に支えている。

『シーネ』というものらしい。
最初 温湿布のようだったが、冷えるにつれて
石膏のように固くなり、足の形に沿った添え木になるのだ。


固まるまではあっという間なのだが、
プリンとポッキーがくにゃん、とかみ合わない足(笑)を
固定しながら待つのはけっこう痛い。
そもそもこの状態で固めて、ポッキーはちゃんと穴に入っているのか?


「手術は4日後の午後です」
そ、そうなの? 添え木だけのこの状態で大丈夫なものなの?
プロローグ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。